ファクトリーオートメーション(FA)伝送媒体

ファクトリーオートメーションのイーサネット環境で使用される伝送媒体、ケーブル、コネクタについて紹介しています。

産業で使用される場合、ケーブルやコネクタについては、環境面も考慮が必要です。昨今使用頻度が増加傾向のワイヤレスについても解説しています。

[目次]

  1.銅ケーブル

  2.コネクタ

  3.PoE

  4.光ファイバー

  5.ワイヤレス

銅ケーブル

通信ネットワークの構成要素 

主要なイーサネット伝送媒体は銅線です。銅線は光ファイバーと比較して、2つの利点があります。


 1.ケーブル加工(コネクタアッシー、端末処理)が容易
 2.接続されたデバイスへ同時に電力供給も可能

ISO / IEC 11801-1規格では、コンポーネント要件(ケーブル及びコネクタ)が指定されており、カテゴリとしてグループ化されています(いわゆるCat.)。現在、Cat.5 から Cat. 8.2 まであります。
例):40GBASE-T規格の場合、要件を満たすことができるのは、カテゴリCAT 8.1のケーブル及びコネクタのみになります(表を参照)。

カテゴリの主な違いは、データ送信に使用できる周波数と、周波数によって左右される送信速度です。

 

  カテゴリ
規格 通信速度 電線ペア 距離 5 6 6A 7 8.1
100BASE-TX 100 Mbit/s 2 100 m X X X X X
100BASE-T 1,000 Mbit/s 4 100 m X X X X X
10GBASE-T 10Gbit/s 4 55 m   X X X X
10GBASE-T 10Gbit/s 4 100 m     X X X
40GBASE-T 40Gbit/s 4 30 m         X

 

[クロスセパレーター(十字介在)]

イーサネットケーブルは、フィールドバスよりも高い周波数(最大2 GHz)で動作し、より高品質のシールドと、設置に関する深い専門知識(最大ケーブル長など)が必要です。電線

同士が影響し合わないように、可動アプリケーションなどでは、プラスチック製のクロスセパレーター(十字介在)が使われる事もあります。

 

これにより、電線間に隙間を作ることができます。フィールドバスの場合、特性インピーダンスは激しい変動がありますが、銅ベースのイーサネットケーブルの場合は常に100Ωオームであり、通常は+/- 15%の許容誤差です。

コネクタ

コネクタに関しては、RJ45コネクタが標準として確立されています。

しかし、設計上、RJ45コネクタはカテゴリ7、7A、8.2には適していません

それは、コンタクト同士が非常に近く配置されているため、相互干渉が発生する可能性があるからです。

カテゴリ8.1の制限値は、RJ45が満たせるように意図的に定義されています。

 

いわゆるチャンバープラグなどの他のコネクタでは、干渉を最小限に抑えるため、個々のツイストペアを束ねることで、カテゴリ7、7A、8.2の厳しい制限値を満たすことができます。

代表なものでは、TERAやGG45コネクタが挙げられます。GG45コネクタは、コストが高く、互換性のある端末装置がないため、まだ広く市場浸透していません。これらのコネクタはすべて、保護等級IP20です。こうした中、比較的環境の悪い産業界でイーサネットを使用するためには、フィールドバスでも多用されるM12コネクタを使用します。通常、Dコード(2ペア(4心))やXコード(4ペア(8心))が使用されます。

 

入力→伝達関数→出力入力→伝達関数→出力

Power over Ethernet(PoE)

PoE(Power over Ethernet)とは、データに加え、電力を同時に提供する技術です。PoEは、基本的に2つの異なる方法で実現できます。電力は、データ送信に使用されているツイストペアに加えて、未使用のツイストペアで送信されます。次の表では、PoEの発展が示されています。表の通り、仕様が発展するにつれて、送信出力が大幅に増加していきました(15.4W→25.5W→51W)。4PPoEでは、ツイストペアすべてが給電に使用されます。

 

電力損失を最小限に抑えるために、電線の断面積は可能な限り大きい必要があります。またコネクタのコンタクトは、アーク放電対する保護のために特別な設計にする必要があります。アーク放電は通電中にケーブルを引き抜いた場合などに発生する可能性があります。保護されていない場合、アーク放電によりコンタクトが損傷して、データ伝送に障害が発生するリスクがあります。

 

 

Power over Ethernet 規格 リリース 出力 アンペア数/ツイストペア
PoE IEEE 802.3af 2003 15,4 W 350 mA
PoE+ IEEE 802.3at 2009 25,5 W 600 mA
4PPoE(bzw. „PPoE++“)A IEEE 802.3bt 2018 51 W(71 W) 600 mA(960 mA)

光ファイバー

[プラスチック光ファイバー(POF)]

POFとは、プラスチック光ファイバー(Polymer Optical Fiber)の略です。プラスチック光ファイバーの加工は比較的簡単で、現場レベルでもコネクタ加工、端末処理などが可能です。しかし、高減衰のため、低通信速度・低域です。

 

  • コア:
    980 µm
    PMMA(アクリル樹脂)
  • クラッド:
    1000 µm
    フッ素化ポリマー
  • 絶縁体:
    PE / PVC(保護目的)
  • ケブラー:
    オレンジアラミドファイバ
    (ストレインリリーフ)

[プラスチッククラッドファイバー(PCF)]

PCFは、プラスチッククラッドファイバー(Polymer Cladded Fiber)の略で、HCS(大口径ポリマークラッド光ファイバー(hard-clad silica optical fiber)とも呼ばれます。加工はPOFの場合ほど簡単ではありませんが、手作業でも可能です。PCFでは、減衰は中程度であるため、POFよりもデータ通信速度及び帯域が優れています。

 

  • コア:
    200 µm
    石英ガラス
  • クラッド:
    230 µm
    プラスチッククラッド
  • コーティング:
    500 µm
    フッ素樹脂
    ダメージ保護目的
  • ケブラー:
    オレンジアラミドファイバ
    (ストレインリリーフ)
  • 絶縁体:
    ダメージ保護目的

[ガラス光ファイバー(GOF)]

GOFはガラス光ファイバー(Glass Optical Fiber)の略です。「ガラスファイバー」は、石英ガラスで成り立ちます。GOFの加工は手作業では処理できないため、特殊な加工設備が必要です。GOFは非常に低減衰のため、高通信速度・高域です。

  • コア:
    50µm、62.5µm →マルチモード
    9µm   →シングルモード
  • クラッド:
    125 µm
    MM (ステップインデックス)
    MM (グレーディッドインデックス)
    SM (ステップインデックス)
  • コーティング:
    250 µm
    ダメージ保護目的
  • ケブラー:
    オレンジアラミドファイバ
    (ストレインリリーフ)
  • 絶縁体:
    ダメ―ジ保護目的

シングルモード光ファイバー:

ここでは、1波長の光が伝送されます。減衰が少ないため、長距離に適しています。 線心の直径は9μmですが、アウターシースの直径は125μmです(表記:9/125)。

マルチモード光ファイバー:

ここでは、様々な波長で光が伝送されます。減衰が大きいため、マルチモード光ファイバーは、短距離やローカルネットワークに適しています。線心の直径は50μm(又はそれぞれ62.5μm)で、アウターシースの直径は125μmです(表記: 50/125又は62,5 / 125)。

 

銅ケーブルの場合と同様に、光ファイバーのカテゴリも定義されています(ISO / IEC 11801-1で定義)。GOF特性は、マルチモードの場合はクラスOM1からOM5に細分化され、OS1とOS2はシングルモードに適用されます。銅線ベースのケーブルと同様に、数値が大きいほど要件が厳しくなり、高通信速度・長距離が可能であることを示します。

 

コネクタ

光ファイバー回線は、通信方向に対して1本の導体を使用します(シンプレックス)。このため、2本の回線を組み合わせてペアを形成し、データを送受信できるようにします(各方向に1回線でデュプレックスになります)。

そのため、コネクタには通常、2つのコネクタを組み合わせてペアを形成する機能があります。最も一般的なコネクタはLCコネクタ(ランパートコネクタ)です。サイズが小さいため、SCコネクタ(Subscriber connector)に取って代わりました。

E2000コネクタには、リリースタブと、コネクタを接続すると自動的に開く保護キャップがあります。シングルモードとマルチモードの両方に使用できます。

MPOコネクタ(マルチファイバー プッシュオン、英:Multiple-Fiber Push-on)は最大32ファイバーをまとめることができ、主にデュプレックスパッチケーブルの代替として、また光ファイバー回線がグループ化されるアプリケーションに使用されます。

ワイヤレス

データはケーブル(銅ケーブルや光ファイバーケーブルなど)を介して送信する必要は必ずしもありません。Bluetooth、LTE、WLANなどを使用して、空気を介して伝送することも可能です。

[ワイヤレス伝送の制限]

空気は一般的に共有媒体として認識されています。つまり、ハブなどと同様に、複数のデバイスによりワイヤレス通信に衝突が発生する可能性を否めません。ユーザー数が増えると、各ユーザーが利用できる伝送容量が減少することになります。他のタイプの無線伝送(軍用・警察無線など)への干渉を回避するために、民間用には特定の無線周波数が定義されています。2.4GHzと5GHzの周波数範囲が、世界中の無線LANに使用されています。日本をはじめ、米国やヨーロッパなど様々な国で上記の周波数範囲に制限が適用されます。伝送はいわゆるチャネルを介して行われます。最近の規格では、高通信速度を実現するために、複数のチャネルをバンドルできます。

 

[ケーブル伝送とワイヤレス通信の違いとは]

ワイヤレス通信は、柔軟性とモビリティが重要な場合に適しています。しかし、将来、ワイヤレスデータ伝送がケーブルに完全に取って代わるわけではありません。長距離、信頼性の高いデータ伝送、エネルギー効率、リアルタイム機能が必要な場合、ケーブルを介した通信はワイヤレス通信と比べ、非常に優れています。また、一般的にケーブルは故意の干渉を受けにくい傾向があります。これは、5Gなどの新しいワイヤレス規格でも変わりません。

ワイヤレス通信はケーブルベースのシステムに置き換わることはありませんが、特別な要件がある場合にはケーブルベースのシステムを補完できます。

シンプルなコンベアシンプルなコンベア

イーサネットワイヤレス規格

イーサネット規格を担うIEEEワーキンググループ(WG)802も、100BASE-T規格(IEEE 802.3の一部)とほぼ同時に無線LAN規格(IEEE 802.11)を承認しました。 それ以来、技術が進歩した結果、多くの新しい無線LAN規格が誕生しました。表には、重要な標準を示されています。

 

規格 周波数チャネル チャネルバンドリング 最大範囲 最大伝送速度
802.11a 5 Ghz 1 チャネル(20 Mhz) 120 m (屋外) 54 Mbit/s
802.11g 2.4 Ghz 1 チャネル(20 Mhz) 140 m(屋外) 54 Mbit/s
802.11n 2.4 Ghz/5 Ghz 2 チャネル(40 Mhz) 250 m(屋外) 600 Mbit/s
802.11ac 5 Ghz 8 チャネル(160 Mhz) 35 m(屋内) 3,466 Mbit/s
802.11ad 60 Ghz 108 チャネル(2160Mhz) 3,3 m(屋内) 6,757 Mbit/s

ここでは、ファクトリーオートメーション(FA)における通信ネットワークの基礎的な知識を紹介しました。

弊社では、このような自動化システムにおけるケーブル・ケーブルグランド・コネクタ・ハーネスなどの分野で最適なソリューションを提供しております。

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