シングルペアイーサネット‐Single Pair Ethernet (SPE)
インダストリー4.0とIIoTは、より多くのデバイスが接続され、大容量のデジタル通信が行われ、データトラフィックが継続的に増加し、より多くのセンサーが現場レベルや生産設備に設置されることを意味します。
まさに、コンパクト化、省スペース化がより一層求められます。しかしまた、デジタル通信が構造的な障壁にぶつかる場所でもあります。フィールドレベル(現場)で最小のセンサーに至るまで継続的に監視・制御することは非常に重要であり、将来的にはさらに重要になる見込みです。そして、シングルペアイーサネットがそのキーソリューションとなります。
SPEがもたらす産業ネットワークの改新
[クラウドからフィールドレベルのセンサー/アクチュエーターへのシームレスな通信]
これまで、フィールドバスは文字通り、フィールドレベル(現場)で使用されることが多く、現場からクラウドへの連続通信は基本的に、ゲートウェイを使用することによってのみ可能でした。
ゲートウェイにはコストがかかり、プログラムも非常に複雑です。その結果、現場レベルでのデータへのアクセスが実際に実現することが困難です。
その一方で、インダストリー4.0とIIoTの神髄に入りこむには、すべてのレベルにまたがるシームレスな通信が不可欠となり、そのためには、イーサネット・ネットワークと互換性のあるSPE (シングルペアイーサネット)インフラが現場レベルで必要となります。
SPE‐シングルペアイーサネット
[1ペア銅線によるイーサネット伝送]
SPE(シングル・ペア・イーサネット)とは?
また、その回線は通常の銅線データ回線と比べてどのようなものなのでしょうか?
SPE(シングル・ペア・イーサネット)は新しいデータ伝送技術で、もともとは自動車の省スペース・軽量化のために開発されました。ツイストされた1対の銅線でイーサネット伝送を可能にします。
その違いを説明するために、SPEケーブルと "標準 "イーサネット・ケーブルを比較してみましょう。
表の通り、SPEケーブルは、外径が大幅に小さくなり、重量が3分の1に軽減され、最小曲げ半径がほぼ半分になります。 このため、このSPEケーブルは狭い場所での柔軟な使用に理想的です。
SPEアドバンテージ・サマリー
先述のように、フィールドレベルまでの連続通信や、スペースや重量といった物理的な側面だけでなく、他にも多くのアドバンテージがあげれらます。
●シームレス・イーサネット・ネットワーク:
→"ゲートウェイ "なし:あるプロトコルから次のプロトコルに変換する必要のないハードウェアを目指しています。
継続的なIPベースの通信:
→プロトコルの効率性
●配線工数削減:
SPE を使用することで、配線が容易になり、配線接続にかかる時間と費用を節約できます。(接続するケーブル本数が減る、曲げやすい等)
●PoDL:
同一ケーブル経由でのフィールド機器への電源供給。
SPEを使用した場合:小規模な消費電力向けに、データケーブル経由で電力を伝送することができます。(電力:最大50Wがエンドデバイス(センサー、スイッチ、カメラなど)に到達します)
●長距離配線:
最大1,000m。イーサネットでは最大100メートル。
プラント産業など長距離をカバーする場合は特に有効です。
●信頼性:
LANはWLAN(無線)よりも安全で、信頼性が高く、保護されているため、低い脆弱性が実現できます。
※無線技術よりも信頼性が高いかどうかは、常に各システムとそこでの条件に依存します。
●バッテリーレス:
PoDLの為、センサー機器類にバッテリーが不要となり、バッテリーレスによるサスティナブルを向上します。
予備知識PoDL = パワー・オーバー・データライン
IEEE 802.3buで定義されているPoDL(Power-over-Data-Line)。低消費電力(最大50W)を必要とするSPE(シングルペアイーサネット)への電源供給とデータ供給を同時に行うことが可能。
SPEアプリケーション
SPEが利用できる応用分野は、非常に幅広いものです。アプリケーションをより具体的にするために、2つのアプリケーション例をご紹介します。
現状:
・2ペア Cat.5 イーサネットケーブル
要求仕様:
・データ伝送速度 100 Mbit/s
・捻回、可動動作対応
・省スペース、軽量化
SPEアドバンデージ
・ロボット動作対応
・省スペース、軽量化
・センサー直結
・データ速度 100 Mbit/s
・リモートI/O不要
→コンポーネント不要(コスト削減)
現状:
・2ペア Cat.5 イーサネットケーブル M12D、RJ45
要求仕様:
・IP67のデイジーチェーン
・堅牢、柔軟、可動用パッチケーブル
・通信プロトコル:PROFINET 他 (100 Mbit/s)
SPEアドバンデージ
・リモートI/O不要
・配線接続と省スペース
・伝送速度 100 Mbit/s
・イーサネットのネットワーク経由でセンサーデータに直接アクセス
・センサーの追加サービス(パラメータ化、診断)が可能
・スイッチ無しのマルチドロップ設置
LAPPのSPEソリューション
工場では、無数のセンサーやアクチュエーターが混在しており、至る所にイーサネット・ネットワークが張り巡らされています。LAPPのSPEソリューションでは、固定配線、可動配線、パッチケーブル等様々なシーンで使用可能な製品をご提案しています。
[SPEケーブルソリューション]
各種用途に応じたSPEケーブルやパッチケーブルがラインナップされ、UL認証も取得しています。
[SPEコネクタソリューション]
EPIC® DATA SPE-6 FA M CS1
SPEコネクタ(圧着タイプ)
EPIC® DATA SPE-6 PCB F
SPE 基盤実装型ソケット
アドバンテージ:
✔ コンパクトデザイン
✔ シンプルな構造と容易な接続
✔ 制御盤、産業用ロボット、フィールド機器に最適
✔ 標準化されたインターフェイス
→LAPPでは、現在IEC63171-6に準拠したデザイン
圧着タイプのSPEコネクタは、現場でアッシーも可能です。また勘合相手である、基板実装型のPCBソケットバージョンもご用意しています。このコネクタは、コンパクトな設計で、配線工数のタイムセービングの簡素化を可能にし、制御盤、産業用ロボット、フィールド機器に好適です。
また、現在、コネクタインターフェイスは、標準化が進められているインターフェイス(IEC63171‐6)を採用しています。
[標準化の現状]
ケーブルについては、IEEEのプロトコル規格802.3ですでにすべてが明確に定義されており、データレートやケーブル長などSPEケーブルの伝送特性やSPEプロトコルの伝送規格が規定されています。
一方コネクタの場合は、インターフェイスの標準化が進められており、LAPPはこれに取り組んでいます。
LAPPはSPEインダストリアル・パートナー・ネットワークのメンバーであり、SPEインフラストラクチャーの構築を支持しています。
SPEケーブル
規格:IEEE プロトコル 802.3
1. データレート、ケーブル長の伝送特性
2. SPE伝送プロトコルの伝送規格
コネクタ
規格:IEC 63171-6
標準化のプラグインインターフェイス
SPE Industrial Partner Networkとは
SPE Industrial Partner Networkとは、SPEに関するあらゆる質問に対する最初の窓口であり、将来のIIoTアプリケーション開発のための明確な推奨事項を提供し、そのバンドルされた専門知識により、将来のユーザーに、より大きな投資の安全性を提供しています。
SPEインダストリアル・パートナー・ネットワークのメンバーは、システムとコンポーネントの標準化や、産業界におけるSPE技術の普及と市場浸透にも取り組んでいます。オートメーション業界の多くの有名企業がメンバーであり、SPEの関連性を裏付けています。
SPEインダストリアル・パートナー・ネットワークには、現在57社が加盟しており、LAPPは正会員として共同決定権を持っています。