ハロゲンフリーケーブル
ハロゲン含有のケーブルやアクセサリは、時に火災が発生した際、人体にも大きく影響を及ぼす部品です。ケーブル選定の際は、アプリケーションやハロゲン含有を考慮し、適切な選定が必要とされます。LAPPではハロゲンフリーのケーブルやアクセサリをご用意しています。ここでは、ハロゲンフリーの重要性や規格などを解説しています。
ハロゲンとは?
フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)の5種類の元素はハロゲンと呼ばれ、元素周期表の第17族に属しています。このハロゲンは、PVC(ポリ塩化ビニル)をはじめ、多くの化合物に含まれています。特に、PVCは耐久性に優れているため、多くの工業製品に使用され、ケーブルの絶縁体やシースにも多く使われています。PVCは、難燃性を高めるために塩素や臭素などのハロゲンが添加されていることが多く、それによって、火災の際の有毒ガスの発生など、健康に害を及ぼす可能性があります。そのため、ケーブルにはハロゲンを含まないプラスチックが使われることも多くなってきています。


ハロゲンフリーケーブルとは?


ハロゲンフリーケーブルとは、プラスチックの組成にハロゲン物質を含まないケーブルです。
ハロゲンを含むプラスチックは、先に述べたPVC、クロロプレンゴム、フッ化エチレンプロピレン、フッ化ポリマーゴムなど、名称に含まれる化学元素で識別することができます。
ハロゲンフリーケーブルの材質は、シリコンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー(TPE)、エチレンプロピレンジエンゴムなどのプラスチックででき、重金属系の安定剤や軟化剤を含まず、難燃性の添加剤も環境に配慮した材質です。
材質で見るハロゲンフリー有無
以下表では、ケーブルやアクセサリで使用される材質で、ハロゲンフリー有無を示します。
ハロゲン含有のケーブル材質 | ハロゲンフリー不含のケーブル材質 |
塩素系 フッ素系 |
・Si(シリコンゴム) ・PUR(ポリウレタン) ・PE(ポリエチレン) ・PA(ポリアミド) ・PP(ポリプロピレン) ・TPE(熱可塑性エラストマー) ・EPDM(エチレンプロピレンゴム) ・EVA(エチレン酢酸ビニル) |
ケーブル業界では、ハロゲンフリーケーブルの表示について、市場共通の呼び名が数多く存在し、メーカーによって、以下のようなハロゲンフリーケーブルの呼称があります。
ケーブル呼称 | 意味 |
HFFR | Halogen-Free, Flame-Retardant(ハロゲンフリー、難燃剤) |
LSZH (または LS0H) | Low Smoke, Zero Halogen(低煙ゼロハロゲン) |
FRNC | Flame Retardant Non Corrosive(難燃剤、非腐食性ガス) |
HF | Halogen-Free(ハロゲンフリー) |
ハロゲンフリーケーブルの重要性
ハロゲンは健康を害する可能性があります。特に、ハロゲン化プラスチック、PVCが燃えると、プラスチックからハロゲン化水素が放出されます。
ハロゲンは、消防隊の消火用水や粘膜液などの水と結合して酸を作り、塩素は塩酸に、フッ素は腐食性の強いフッ化水素酸になります。また、ダイオキシンなど毒性の強い化学物質の混合物ができることもあります。これらが人間の気道に入ると障害を起こし、窒息の危険が伴います。たとえ火災から生き延びたとしても、健康が損なわれる可能性があるのです。ハロゲンフリーケーブルの場合は、有毒ガスを引き起こす事を最大限に抑えます。
LAPPの動力コントロールケーブルOLFLEX®、計装・データ通信ケーブルUNITRONIC®、イーサネットケーブルETHERLINE®、光ファイバーHITRONIC®は、火災によって人や動物に深刻な損傷を与える可能性がある公共施設、輸送機関、または一般的な場所での使用に特に適しています。
これらのケーブルは煙ガスの密度が低いため、煙の発生が少なく、閉じ込められた人が避難経路を確保しやすいというメリットがあります。


ハロゲンフリー規格
ケーブルや絶縁電線の中で材料が燃焼したときに発生するハロゲン酸ガスの量を測定するための試験装置と手順を定義したものとして以下規格に準拠しています。
IEC 60754-1(またはDIN EN 60754-1)
ケーブル材質の燃焼から発生するガス量の試験:ハロゲン酸含有量の測定
LAPPケーブルの場合、IEC 60754-1に基づくテストを適用し、テストした材料が5mg/gのハロゲン酸含有量を超えないことを確認しています。
IEC 60754-2(または、DIN EN 60754-2)
ケーブル材質の燃焼から発生するガス量の試験:pH値と導電率の測定による酸性度の判定
LAPPケーブル:本規格準拠ハロゲンフリーケーブルは、規格値に基づき、pH値4.3を下回らず、また、導電率の測定値も10μS/mmを超えることはありません。
DIN EN 61034-2
燃焼するケーブルの煙濃度測定の試験:
電線・ケーブルの煙密度は、光透過性の最小値で表されます。火災安全性の計算は、規格の附属書Aで導き出すことができます。また、付属書Bでは、他の規格に要求事項がない場合の推奨事項を示しています。この附属書では、光透過率の値を最低値として60%を推奨しています。
DIN EN 61034規格に準拠するLAPP製品は、記載されている試験方法により、少なくとも60%の光透過性を確保しています。